健康で規則正しい、栄養バランスの取れた食生活とは?

食生活と健康について

健康的な生活とは

健康な状態とは、どのような状態を指すのでしょうか? 世界保健機関(WHO)では、「健康」を次のように定義しています。

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態であることをいいます。」

引用:「世界保健機関憲章前文」日本WHO協会仮訳

つまり、「健康」とは、体だけではなく、精神的、社会的にもバランスが取れている状態を指します。

健康的な生活には、「食事」「運動」「休息」が大きく関わっています。
例えば、食事のバランスが崩れてしまうと、栄養不足や栄養過多により、体調に何らかの影響を及ぼします。運動不足になると、肥満の原因になったり、体力の低下の原因になります。無理をして仕事をすると、休息がとれず、精神的にも肉体的にも影響が出る可能性があります。
健康的な生活のためには、「食事」「運動」「休息」の3つのバランスを整えることが非常に重要なのです。

健康には食事の栄養バランスが重要

私たちが活動するためのエネルギーや栄養素は、食べ物から摂取することが基本のため、健康的な生活には「食事」がとても重要なのです。

和食は、理想的な栄養バランスの食事といわれ、主食、主菜、副菜、汁物で構成されています。
主食にはエネルギーを生み出すのに必要な炭水化物(糖質)を含むご飯、主菜には体をつくる材料となるタンパク質を含む肉や魚、卵、大豆など、副菜・汁物には体の調子を整えるビタミンやミネラル、食物繊維を含む野菜や海藻が使われるのが一般的です。

年齢や性別、ライフスタイルによって必要になる栄養素の量が変動するため、注意をする必要はありますが、基本的にはこのバランスを整えることで、私たちが活動するために必要な栄養素を摂取することができるのです。

規則正しい食生活とは?

規則正しい食生活の3つの基本

規則正しい食生活とは、1.栄養バランスの整った食事を、2.1日3食、決まった時間に、3.適量食べる生活のことです。
私たちは、日々何かをするために動いたりすることで、エネルギーを消費します。そのために必要なエネルギーを食事から摂取しています。

この消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスを保つことが大切です。
食事の量を多くすれば、摂取エネルギーが過剰になり、肥満につながりますし、逆に食事の量が不足してしまうと、体に蓄えられたエネルギーを使うため、痩せて飢餓状態になってしまいます。自分に合った食事の量を摂取することが大切なのです。

食事の量を腹八分目に抑えることで、消費エネルギーと摂取エネルギーを同じ量のバランスに維持することにつながります。

規則正しい食生活をするメリットとは

毎日決まった時間に食事をするという行為は、生活リズムを整えることや肥満予防につながります。

1日は24時間ありますが、私たちの体にある体内時計は24時間よりも若干長くなっているといわれています。
これを24時間にリセットするため、朝日を浴びることや朝食を食べることが必要になります。朝食を抜くと、このリズムが狂ってしまうだけではなく、エネルギーを使わないように代謝を抑えるようになってしまいます。

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「体内時計」

体内時計がきちんとリセットされることで、生活リズムが整い、仕事や学業に集中することができます。また、3食しっかり食べることで消化吸収がスムーズに行われ、便秘改善や健康の維持にもつながります。

栄養素の過剰・欠乏に注意

私たちが健康に過ごすために、食事をするうえで気をつけなければならないことがいくつかあります。

栄養バランスが偏った食事は、栄養素の過剰や欠乏を招いてしまうため、避けたほうがよいでしょう。
例えば、炭水化物を完全に抜く、サラダだけしか食べないなどの極端なダイエットは、栄養不足によって不健康になる可能性があります。
また、ストレスなどにより食欲がコントロールできず暴飲暴食をしてしまうと、肥満の原因になります。

食品に含まれている栄養素は、大きく分けて5つあります。これを「五大栄養素」と呼んでおり、炭水化物、脂質、たんぱく質、無機質、ビタミンに分けられています。また、栄養素の働きから3つのグループに分けたものを「三色食品群」と呼んでおり、赤・黄・緑に分けられています。赤は主にたんぱく質を多く含み、体をつくるもとになるもの、黄は主に炭水化物・脂質を多く含み、エネルギーのもととなるもの、緑は主にビタミン・ミネラルを多く含み、体の調子を整えるものです。

私たちの健康を維持するためには、これらをまんべんなく、バランスよく摂取することが望ましいとされています。

栄養バランスのとれた献立例

栄養バランスのとれた献立の例を紹介します。

主食:ごはん(お茶碗1杯分)

主菜:豚肉の生姜焼き(添え野菜として千切りキャベツ、トマト)

副菜:ほうれん草ときのこの煮びたし

汁物:豆腐とわかめのみそ汁

主食は、炭水化物を主としたごはんにしました。白米ではなく、玄米や雑穀米にすることでビタミンやミネラル、食物繊維の量が増えます。主食でしっかりご飯やパンを選ぶことで、エネルギー源を確保することができます。
主菜は、タンパク質を含む肉を使った料理にしました。タンパク質は、体を作る栄養素で、筋肉だけではなく皮膚や髪、爪などにも使われます。タンパク質を不足させないように毎食意識して食材を取り入れると良いでしょう。
炭水化物やタンパク質だけでは、代謝がスムーズにいかなくなります。
副菜として野菜やきのこ類、海藻類を取り入れることでビタミンやミネラルを補給しましょう。
野菜は、緑黄色野菜と淡色野菜では含まれているビタミンが異なります。
緑黄色野菜には、主にβカロテンをはじめとしたカロテノイドが多く含まれています。抗酸化作用があり、老化予防に効果があるといわれています。
淡色野菜は、緑黄色野菜に比べて水分や食物繊維が多い傾向にあります。
このように緑黄色野菜と淡色野菜は栄養素の特長が違うため、どちらかだけなく、両方ともバランスよく食べることが大切です。

汁物は、主に水分を補給するためのものです。さらに、献立の内容に合わせることで、不足している野菜や海藻類、大豆製品などを取り入れることで補うことができます。今回の献立では、大豆製品と海藻類がほかのメニューに入っていないため、汁物に加えました。汁物は塩分が高くなりがちですが、具だくさんにすることで具材の旨味と汁の量が減るため、塩分を少なくすることができます。

ポイントは、それぞれの料理の主要な食材が被らないようにすることです。そうすることで、栄養素の偏りを防ぐことができます。また、油を使った料理を1品だけにすれば、エネルギーの摂りすぎを防げます。

自分にとって必要な栄養素・エネルギーの目安を知ろう

現在の自分の食事バランスが良いかどうか判断するには、食事バランスガイドを活用すると良いでしょう。

引用:農林水産省-「食事バランスガイド」より

食事バランスガイドでは、性別や身体活動レベル、年齢に応じて食べる量や内容が設定されています。まずは自分の基準となる「コマ」をチェックし、そこから自分の食事バランスがどうなっているかを確認していく必要があります。

(1)自分に合ったコマの大きさを確認しましょう

チェックポイント

□性別
□年齢
□身体活動レベル(低い・ふつう・高い)

引用:農林水産省-「実践食育ナビ」-「『食事バランスガイド』チェックシート

食事バランスガイドでは、それぞれの料理ごとに「1つ」の目安量が決まっています。

参考:農林水産省-「実践食育ナビ」-「食事バランスガイド早分かり」-「『何を』『どれだけ』材料と料理区分」

それらを1日いくつ食べてよいかによって、コマの大きさが異なります。

(2)1日何をどのくらい食べているのかを確認しましょう。

チェックポイント

□主食(ごはん・パン・麺類など)をどのくらい食べているか?
□副菜(野菜、きのこ、いも類など)どのくらい食べているか?
□主菜(肉、魚、卵、豆製品など)どのくらい食べているか?
□牛乳・乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)どのくらい食べているか?
□果物(ミカン、りんごなど)どのくらい食べているか?
□菓子・嗜好飲料はどのくらい食べているか?(食べ過ぎていないか?)

どれかが不足していたり、過剰に摂取していたりすると、コマはうまく回らず傾いてしまいます。うまく回るように量を調整してバランスを整えてみましょう。

食事バランスガイドは難しい栄養計算を行わずに栄養バランスを確認できる方法です。ぜひやって活用してみてください。

性別による違い

もちろん個人差はありますが、女性と男性では、体のつくりが違うため、同じ年齢で比べても必要な栄養素の量が異なります。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」から、一日に必要な栄養素の摂取量を見てみましょう。

エネルギー消費量は、筋肉量の多い男性のほうが高い傾向にあります。それにより男性のほうが食事量が多いため、必然的に塩分の摂取量が高くなります。そのため、一日あたりの食塩摂取の目標量も男性のほうが約1g多く設定されています。

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.306 ナトリウムの食事摂取基準

女性には月経があるため、男性よりも鉄分の必要量が高くなります。妊娠に必要な葉酸の摂取量も、妊活中の女性や妊娠中の女性で多くなります。
ライフステージに合わせて、必要な栄養素をしっかり摂取することが必要です。

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.366 鉄の食事摂取基準

年齢による違い

成長期では、体をつくるために非常にたくさんの栄養素が必要になります。特に、骨をつくるカルシウムや筋肉をつくるタンパク質が重要です。
成人になると、生活習慣病予防のためにエネルギー量を調節することが大切になります。
高齢になると、筋肉量が落ちてしまうため、タンパク質を意識することが必要だといわれており、タンパク質の摂取量は少し高めの基準が設定されています。

必要なエネルギー

一日に必要なカロリー、いわゆるエネルギー必要量は次のような計算式で求めることができます。

エネルギー必要量=1日の基礎代謝量×身体活動レベル

基礎代謝量と身体活動レベルは、「日本人の食事摂取基準」に示されているので、該当するものを選んで計算しましょう。

基礎代謝量

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.74 表5 参照体重における基礎代謝量

身体活動レベル

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.79 表8 年齢階級別に見た身体活動レベルの群分け(男女共通)

ただし、エネルギー必要量はあくまで参考値ですので、まずは、自分の今の体重が適切かどうかを知ることが大切です。
これにはBMIという体格の指標を使うといいでしょう。

BMI=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}

成人の場合、このBMIが18.5から25未満になるように、日々の食事や運動量を調整するとよいでしょう。

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「BMI」

不足しがちな栄養素とそれを含む食品の例

ビタミンやミネラルなど、食品から一度にたくさん摂取しづらい栄養素は不足しがちです。そこで、不足しがちな栄養素が豊富に含まれる食品の例を紹介します。

抗酸化物質を摂取できるトマト

リコペン(リコピン)と呼ばれる赤い色素成分をもち、強い抗酸化作用があります。ナトリウムの排出を促すカリウムや疲労回復に効果が期待できるビタミンCも含んでいます。

DHA・EPAを摂取できるイワシやサバなどの青魚

魚は、たんぱく質を含んでいるだけではなく、良質な脂質を含んでいます。特に青魚に多く含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は体内で作ることができない必須脂肪酸です。DHAは脳の構成成分として注目されています。EPAは血液をサラサラにする働きがあり、動脈硬化や心疾患の予防に効果が期待できます。

鉄を摂取できるレバーや貝類

赤身の肉や魚は鉄分を多く含んでいますが、特にレバー(肝臓)や貝類に多く含まれています。鉄分は野菜に含まれているものもありますが、動物性食品の鉄分のほうが植物性食品に比べて吸収率が高いので、効率よく摂取するのであれば動物性食品を選ぶのがおすすめです。お茶やコーヒーに含まれるタンニンは鉄分の吸収を阻害するので注意しましょう。


「健康で規則正しい食生活」と聞くと、なんだか難しそうに思えますが、ポイントは3つ。
1.主食・主菜・副菜の揃ったバランスのよい献立を心がける
2.1日3食決まった時間に食べること
3.適量を食べること
です。
規則正しい食生活にすると、自ずと生活リズムの乱れの解消にもつながります。食材の彩りを意識するなど、食事を楽しむことも心がけると、心の健康にも役立ちます。ぜひ、整った食生活を意識してみてください。